Brahms Strings Quintet No.2

秋になるとブラームスが聴きたくなるのは僕だけでしょうか。




ブラームスの音楽は、ロマンチックっていうか、


ノスタルジックっていうか、メランコリックっていうか。



とにかく美しく、感傷的で、記憶を掘り下げてくる。


あっ、だから秋にピッタリなのか。






秋に聴くブラームス。 それはセンチメンタル。











営業中に店内のBGMとして交響曲を流す事は少ないので、


必然的に室内楽が聴こえてくる事が多くなります。


特に弦楽。


もちろん、ヴィオロンですから。






ブラームス 弦楽五重奏曲 第2番


始まりは夕暮れ時の深い緑の草原を駆け抜けていくイメージ。





この曲を聴くと自分に息子が生まれた日の事を思い出します。



まだ寒さの残る、初夏の、新月の夜に破水。


予定日より生まれたのが十日早かったので、僕は出産に立ち会う事はできませんでした。






報せを聞いて、仕事をどうにかして妻の実家に駆けつける。


そんな高速バスの中。


ここぞとばかりにベートーヴェンの第九を聴きながら眺めた、


夕焼け空と深緑の山間。





きっと人の親になるのには覚悟がいるでしょう。


「これからは、生まれてきてくれた子の事を一番に、生きていこう。」


まだ見ぬ我が子を想い、父親としての実感もない中で、そう心に誓いました。







ブラームスの弦楽五重奏曲を聴くと、あの時の記憶が甦ります。
(第九じゃなくて)


音楽が記憶に結び付くと、それはとても大切なものになります。


形はありませんが、それは香りの記憶や味覚の記憶と同じ。








道を歩いても、金木犀の香りに出逢わなくなってきましたね。


秋深き。





Brahms String Quintet in G major, op.111 (1-1)