京都の喫茶店
文学と映画とダンスに傾倒して、
お酒に呑まれているのが楽しかった学生時代の前半。
カナート前の高野川で水に足をつけていたら、あくる日に水虫になったりもした二十歳の頃。
“京都カフェ案内”という本に出逢いました。
装丁がお洒落で、内容はカッコ良くて、
カフェや喫茶店の仕事に憧れを持った事を覚えています。
学生時代の後半、老舗の喫茶店で働きはじめ、色々なお店を巡るようになった時、
この本が参考になったのはいうまでもありません。
名バーテンダーや深煎り嗜好の珈琲屋に影響を与えた“リドル”さん、
マダムがシェイカーで作るレモンスカッシュが好きだった“まる捨て”さん等、
なくなってしまったお店もあるけれど、いま読み返してもセンスのいい本。
あれから12年。
この本の目次を見ただけで、京都の老舗喫茶と新しい喫茶店の間柄、お店同士の相関図が見えてきた方は喫茶通です。
内容は色々な喫茶店店主へのインタビューが中心。
この店主って、前に行った時は話さなかったけど、こんなこと考えてお店されてるんだなぁ、とおもったりもして興味深かったです。
珈琲に興味がある人、喫茶店の雰囲気が好きな人、京都観光の参考にしたい人、などなど。
いろんな人が読んで楽しめる、読み物として懐の深い本ですね。
印刷物の中に出てくる人達は、その印刷物の中で時が止まってしまいます。
その後どうなっていったかは知る由もありません。
今回のように改訂版が出なければ。
願わくば12年後にまた、改訂版を出して欲しいですね。
へび年は木村衣有子さんの京都イヤーっていう事で。
あっ、テンション上がって余計な事をいいましたね。
失礼しました。
僕が働いていた老舗喫茶のマダムが言っていました。
「家でも飲める珈琲を、どうしてわざわざ喫茶店で飲むのか。
それは人が、非日常を求めるから。」
今もお店を営む上で根底にある言葉。
“京都の喫茶店”を読んでいて思い出しました。
あっ、じつはこの本に当店も載せていただいてます。
宣伝ですみません。
漠然とカフェや喫茶店に憧れていたあの頃、
この本に自分のお店が載せていただけるなんて夢にもおもいませんでした。
うちのような下町の喫茶店を取り上げていただけるなんて本当にうれしいです。
これからもこの「人懐っこさのある街」で、喫茶店を続けていけるよう努力します。
金木犀の気配がしてきましたね。
気分のいい秋の日には、この本を持って喫茶店へいこう。